徒然。

備忘録

舞台アルキメデスの大戦感想(ネタバレ有)

待ち時間波の音がしているの海軍だな

 

 

開幕から大和轟沈の報。そういう感じか…

登場早々推しが変人数学者やってて最高。偏屈な学者キャラ好き。

山本って山本五十六だと思うんだけどなんでそこまで読めてて戦争止められない??(いや史実だけど)と思ったら金剛代替案会議後に空母の模型で楽しそうに遊んでいて軍人は小児のようなものなり、という芥川の言葉をまざまざと見せつけられた。つらい。畳み掛けるように真珠湾攻撃の計画を聞かされた。つらい。

平山さんはもう少しなんというか堅物とか杓子定規な感じかと思ったけど、目的のために狡い手段を使い、戦況を見えていない上層部を愚かだと諦めて、ただ落としどころを作ろうとしているというなんとも言えないキャラクターだった…落としどころ大事だよね…もう少しあと少し一矢報いてから有利に終戦をとか言っててズルズル終わらせられなかったもんね…でも上は貴方よりずっと愚昧でしたね、つらい。

田中くんはまっすぐに戦争反対でもっと真剣に回避する方法を探すべきだったと嘆く本当に真っ正直な男だった。誰よりも軍人(上官に心酔してどこまでも愚直に着いていく感じが一兵卒だなという意味)でありながら、あれだけ真っ当に戦争に反対を唱えられるのはすごい。ついでによく特効送りとかならなかったなという気もする。櫂もだけど…始まったら従ってた感じかなあ…

櫂は数学者として戦争を止める、というよりは鏡子さんを救うために日本に残り、ただ戦艦大和に魅せられ大和に荷担した感じの描き方だったな…回避できないと思ったのも、轟沈させることで終戦を迎えられると信じたのも含めて、あの表情は魅せられたように思えた…海軍を離れず大和計画に力を貸したことを、無責任だから見届けるというのは真っ当だなとは思う。止めてほしかったけどね…まあ史実だしな…はい。

ざっくりwikiを読んだだけだけど櫂は軍人としてその後も生きていくし、なんならかなりの中枢にいるっぽいので、舞台の終わりで田中と手を取り合って戦争を止められなかった責任として「語り継ぐ」というけど、それどころか戦争犯罪人になるんだろうな…原作では回避のために動いているようなので酌量されるかもしれないし、そもそも空襲などで死ぬ可能性もあるけど。

 

今この時代で第二次大戦の話を見ると、止められない空気があった、という台詞に対して国民一人一人に責任があるという櫂の言葉が重くのし掛かってくるし、私達が先の大戦の責任を取るものではないとは思うけれど、でも今この時代の、防衛費の増加も、憲法改悪も、格差社会も、それぞれどれにも責任はあるんだなと思うよ。

わからないからでただ決まっていく物事を眺め、仕方ないで流されてしまいたくなるけど。ただ声を上げることと選挙に行くことしかできないけど、もっと他にできることはないのか、考え続けなければならないんだろうな…

見ながらずっと、静かの海のパライソの「背負いながら生きていくしかないんだ」「どのような理由があろうとも戦をしてはならぬ」「単純な暴力を選んだ時点で間違いだろ。ま、追い詰められたものの最後の手段なんだろうが」を思い出していた。あの作品も人間の戦を描いているので深く心に刺さっている大好きな作品なんだけど、舞台とかでああいうメッセージを載せてくる作品が出てきているの、むしろ今だからこそ言わなければならないという気概を感じるし、そう思わせる社会には危機感を覚えるよ…

大きな戦艦を作れば米国は危機感を持ち更なる攻撃力を持つ兵器を作るだろう、だから予算を少なくしたという平山の主張、憲法改悪も防衛費の増加も、本当に国防になるのか?軍備を持つことは、抑止力ではなく、懸念にならないか?を考えさせられたよ…

戦争を題材にしてるだけにめちゃくちゃにしんどいし場面転換の音楽が軍靴のような不安を煽る音で怖いし、なんで戦争してしまうんだろうどうして止められないのと思ってしまうしこれから起こる原爆投下を思ってはずっと泣いていたけど、前半はコミカルなシーンも、櫂の人情味あるシーンもあって面白かったよ。

終演後のカーテンコールでも険しい目をしていた鈴木拡樹さん忘れられないし、この作品は本当に多くの人に見てほしいと思った。最後お一人でお辞儀されるときは笑顔が見られたので良かったです。無事に最後まで走り抜けて、多くの人に届きますように。