徒然。

備忘録

映画カラオケ行こ!

綾野剛の狂児、最初めちゃくちゃ怖くてずっと怖いよぉ怖いよぉって見てたんだけど、カラオケでちょっと可愛い表情したりかっこいい表情もあって、怖い、可愛い、怖い、かっこいい、怖い、とめちゃくちゃ情緒が忙しかった。祭林組集合してたときはそっちが怖すぎて狂児…!!になってしまったので、聡実くんがしがみつくのもわかる。

狂児もヤだし怖いんだけど、でもたまに優しくてつい絆されてしまう……ずるい~~

 

原作にはなかった「天使」「聡実くんは“聡い果実”」の台詞がめちゃくちゃ口説き文句ですごかった……

原作の「本物?」と頬叩かれたときの狂児の笑顔には愛情感じちゃったし、僕の名前好きなんですか?と言われたときの「名前…」はこの子鈍いなあ、の意味だと思ったし、狂児は(どういう種類かは微妙だけど)聡実くんのこと好きなんだなと思っていたけど、映画の「聡い果実」はなんかめちゃくちゃ生々しい口説き文句でびっくりしちゃった。聡い果実、ってなんか……食べる気??てなって大丈夫なやつですか??になってしまった、私が大丈夫じゃないだけではないでしょこれ……そういう意図あるでしょ……てめちゃくちゃ動揺しながら見てた。

でも今思うと男社会に生きている男、と思えばまああの語彙も納得ではあるんだよね……男の子相手でもそういう台詞が出るの、人間をたらしこむのに慣れてるのか、本当に口説いてるのか、考えれば考えるほどわからなくなる。

晴れた日に傘差して聡実くん待ってるのも、傘で聡実くん隠して同級生が色めき立つのも、多分隠れて何してるの??というところなのだろうし、そういう意味では狙って恋愛っぽさを出しているのだろうな~とは思うんだけど、明言されてないところが好きだなあ。

オリジナル台詞や演出なのに、原作のあのどういう好きかわからない感じを崩さなくて上手い。やっぱり恋愛じゃん!!といやでも(特に映画の)狂児なら恋愛じゃなくても言いそう……とが交互に来る。

あと映画オリジナルだと聡実くんの「綺麗に歌えん」に狂児が返した「綺麗なものしかダメならこの街全部なくなる」みたいな台詞も好きだった。

多分誰にも話せずに声変わりを怖がって苦しんでいた聡実くんを救ったのは狂児の存在だったんだろうな、というのをわかりやすく描いていて。綺麗なものだけじゃ救われない人間がいる、ということを描いてくれたのが好き。

もちろんヤは肯定されるべきではない存在だし、狂児のようにあっさり向こう側に行ってしまう人もいるだろうから、放置してはいけないと思うけれど、裏社会とかの周縁は元々まともに生きていけない人間のセーフティネットだった、とも聞いたことがあるから、社会から溢れ落ちてしまう人間をなんとかしないことには解決しないのだろうな、見て見ぬふりをしているうちはどうにもならないのだろうな、とも思ってしまう。これだけの貧困が見過ごされて、政治に無関心の社会では。治安悪化を特定の属性の人のせいにだけしているような差別が横行している現代社会で、溢れ落ちる人間をどれだけ掬えるんだろうな……まあ狂児は自らドロップアウトしてしまった感あるからなんともいえないのだけれど……誘われなかったら別に普通に生きていただろうから、そういう意味でも根絶されるべきなのだけど。そう簡単な話でもないんだろうな、現実は。

聡実くんがあのまま縁を切らずに辞めさせようとしてくれれば変わるのかもしれないから、ファミレスの続きが楽しみだな。

みなみ銀座の解体は、裏社会の解体の暗喩だったと思うし、もう無理だな、てなって聡実くんが狂児といられると良い。狂児は聡実くんのもう会わないほうが良い、をあっさり飲むけれど、聡実くん自身はそうは言っても高校卒業まで狂児のことを忘れられずに文集にまで書いてるわけだから。

狂児への鎮魂歌で紅を歌う聡実くん、狂児との日々を思い出してて、歌詞の和訳がここで効いてきてて上手かったな。狂児が聡実くんの「忘れられない人」になってて良い……「俺が見えないのか」で血だらけの狂児が映るの、原作読んでなければ幽霊??てなりそうで良いし、その後聡実くんが「本物?」と頬叩くところまで流れが良すぎて……原作の余白が多い分、映像化で足された部分も多いけれど、違和感がないどころか、二人の単純で複雑な関係性がわかりやすく感じられてよかった。