徒然。

備忘録

MW(ネタバレあるかも)

手塚治虫先生のMW読みました。
なんかもう、すごい。すごいよかった。
映画の予告とか、噂とかで、ホモとは聞いていたけど、
いや、ゆーてなんかちょっとベタベタしとるだけやろ?
商業BLに比べたら軽いもんやろ?
と思っていたんですよ……
全然そんなことなかったガッツリホモだった……
いやホモというと語弊があるんですけど、めっちゃ…
めっちゃお耽美…すごい…
しかもビアンカップルも出てくるという。
この時代に同性愛を扱うってすごくないですか??
しかも聖職者だよ??
方々から非難とかされなかったのかなぁ…

一蓮托生って言ったり、神父さんがなんとか彼を救おうとしたりするのが、すごい切なかった。
あれはもう愛でしょ…
彼も泣いていたのが、なんかちゃんと情があったんじゃないかと思えてとてもよかったです。
あのとき後を追うんじゃないかと思ったけどね、そんなことなくてね。
撃たれたのも彼じゃない気がしたんだけど、やっぱり彼じゃなかったね。流石手塚治虫先生…

MWという毒ガスによって運命を狂わされた二人だけど、神父さんは怖くなって救いを求めたのに、彼は狂ってしまって、それでも神父さんから離れなかったのがなんとも…
彼も本当は救われたかったんじゃないかなぁ…
でも許すのは難しくて、憎む方が簡単だったから、憎んで、世界を壊そうとしたのかなぁ。

神父さんが救われようとしていたのも気に食わなかったのかもしれない。
自分と同じ目にあっているのに、神父さんが憎まなかったのも許せなかったのかなぁ。
彼には神父さんが必要だったはずだし、神父さんのために涙を流すくらいには思っていただろうに…
もう彼が救われることは二度とないのだろうな。
たとえば神父さんが彼をずっと可愛がっていたら、彼は神父さんの隣でずっと大人しく生きたりしていたんじゃないかとか。
奔放な男だったけれど、神父さんだけは特別だったんじゃないかとか。
懺悔をしに行っていたのも止めてほしかったんじゃないかとか。
そう思えてならないです。
神父さんと一緒に彼の最後の良心もたぶん消えてしまったのだろうな。
あの頭痛は良心の欠片だと思ってる。

二人の間にはたしかに交わした情があったし、たぶん誰もそれには割り込めないんだろうなぁ、と。
彼の婚姻にむきになったのも、そりゃ相手のためもあるんだろうけど、なんか嫉妬が混じっていたように見えてしまう。

よいお話とは、まあ言いきれないけれど、大きなもの、政治や権力によって狂わされた人間の狂気は凄まじいなぁと。
隠し事がたくさんある社会は怖いねぇ。
どこかで誰かが大いなるものの犠牲になっても誰も気づかないし、誰も助けてくれないなかで、救おうとしてくれていた神父さんだけは、彼の特別だったんじゃないかな。