徒然。

備忘録

漆黒天-始の語り-ネタバレ感想メモ

開演前
風の吹きすさぶ音と鐘の音
夜中から始まるのかな?
旭太郎が見つかるところなのか、荒くれ集団してるのか…



生まれるところから始まった…しんどい…あの産婆の声が呪いみたいだった

セット荒野の背景と襖だけだったのに、映画で見ているのもありシーンが浮かんだ。ムビステの醍醐味って感じだった。

冒頭からもう陽之介が旭太郎の夢を見たり、旭太郎が陽之介の夢を見たりしてて、もしかして始の最後に入れ替わるのでは??となっていた。
映画で陽之介はどうやってトレースしたんだ?と思っていたけど早々に答えが出た。

服装的にも入れ替わりエンドだった気がする…
そうなると崖から落ちたのは陽之介で、旭太郎が陽之介として生きていたんだろうな…
でもそれなら討伐隊を、蔵近を殺したのは陽之介になっちゃう…いや蔵近にとっては相手を陽之介だと思えていれば幸せなことだったろうな…

嘉田蔵近、陽之介が大好きなのわかりやすくて最高だったし、富士にあたりキツすぎてバレるぞ…と思っていた、外野にバレた、それはそう。むしろ陽之介が気づいてないのがマジで善良で愚直で陽の者なの良い。人を疑うことを知らなさそうだし、自分を疑うこともなさそう。ここまでは。

じろさぶ兄弟に「師匠に色目使うな」って言われる蔵近、明確に「色目」て言われたのがショックだったのかな~て感じした。
お顔見えない距離だったからわからんし、深夜の漆黒天スペースで末満さんが蔵近と千蛇は男色って言ってたから恋愛で好きなんだろうけど、相手は既婚者だし子どももいるし、一生告げる気はなくてただずっと剣を交えて生きていければそれで良かった(と思おうとしていた)んだろうな、と思うと健気で好き。
でも陽之介に日の当たるところにいてほしい、陽之介は陽之介でいてほしい、という理想の押し付けをしていて業、人間を神様にするな。
千蛇ちゃんに「暗くて冷たくて淀んでる」みたいに言われていたのはすごく良かった……勝手に人に理想を押し付けて、なんなら友として諫める形で型に嵌めようとすらしているくらいなので、本当に暗くて冷たくて淀んでるんだよな……たまらん……
キャラ的にも好きだし、暗くて冷たくて淀んでる役の梅津さんも大好きなので最高ですね!!!

千蛇ちゃんが大勢人を殺したから生きていたらいけない死に場所を探してるみたいに言うの、人殺し好きみたいに言ってたし殺し合い楽しんでるしどこまで本気だか…という感じではあるけど、好みの男に殺されたのは良かったね、て感じ。
最期に名前を呼んで、っていう願いを無視して陽之介を呼ぶ蔵近もどこまでも愚直じゃない?似た者同士では。

男色というから二人がそういう関係になるのかと思ってたんだけど(稽古もよく二人でいると聞いてたし)初っぱなから陽之介陽之介💕💕って感じで(実際全然ハートなんか飛んでないけど、どう見ても陽之介が大好きなのはわかるので)千蛇とどうこうなるか……?????と思っていた。
千蛇ちゃんとどうこうなるの「男色」ではなくて、単に好きなのが男、ていう話だった。
蔵近、陽之介にはやわらかく笑って話すのに富士にはわりとキツくて女は口出すなとかお前のせいでみたいな態度出てて分かりやすすぎた……仕方ないし可愛いけど性格悪く思われそうでしんどい……蔵近……


殺陣と音楽と演出がほぼ刀ステでちょっと笑った、手癖って感じ。役者さんもステ出演者多いから流石の上手さだし、見てて面白かった。慣れ親しんだ空気で安心して見てられるやつ。絶対面白いもん。
あとやっぱり殺陣一人ずつ見せ場あるの嬉しいね。
まつりょ、へっぴり腰で声も上ずってる感じなのに素振りが上手くて笑った。隠せてない。討伐のときやたら強くなってて素人からそこまでこんな短期間で上達しねえよ!?て感じだった。
千蛇ちゃんの長い手足をしなやかに動かしたねっとりした動きが蛇みたいだなーて見てたんだけど殺陣でもそんな感じで流石!わかってる!て感じだった。
道場主たちは基本の型がありそうな感じ(剣術わからんので印象だけ)だけど、日陰党は勝つための、人を殺すための殺陣だから型も規則もないみたいな気がした。

周囲の人間が止めるところがちょうど入れ替わりの瞬間の描写なんだろうけど、決定打は陽之介→旭太郎が伽羅に「旭太郎じゃん」って言われたところ、旭太郎→陽之介は富士に「宇内陽之介」と呼ばれたところなんだろうな…あの時仮面は捨てられていたから、旭太郎はもう旭太郎にはなれない。仮面を拾った陽之介は、その後旭太郎になってしまう。ということな気がする…
だから映画の名無しは陽之介で、でも皆騙されていて、喜多の涙は本能的にそれがわかった、とか…?でも最後に笑うのは旭太郎だと思うよ…


二階席だったから表情よく見えなかったけど、まあ雰囲気でわかるので、全体が見えて演出に意識が向いた気がする。
陽之介と旭太郎の切り替え演出が上手い。羽織と白い髪で旭太郎だとわかるようにしてるけど、加えて仮面で代役でもわかりづらくなってて、暫く代役の人がやってから一瞬で交代して仮面外して喋る、というのが面白かった。体格が違わなかったらもっとわかりづらかった気がする。
逆光とか背中で語るのとか、馴染みのある演出!!て感じ。


陽之介と旭太郎、アイデンティティとはなにか?を考えさせられた。
自分が自分であることは、自我だけではなく他人からの貴方は貴方であるという承認が必要なのだろうな。なんか烏哭も言ってたし。
同時に、自我を揺るがせられれば、他人が人を変えてしまうこともできるという可能性を示していて怖い。
自己暗示と催眠みたいな感じだなと思った。

答えはないけど。

今のところはやっぱり始で入れ替わり、終で殺されたのは陽之介として育てられた陽之介、だと思う…映画もう一回見たいし舞台ももう一回見たい。

あと千蛇ちゃんと蔵近それぞれスピンオフがほしい。ああなるまでを知りたい……