徒然。

備忘録

言式「解なし」感想

ひとりじゃなくてよかったなあ…!!!!!!

 

 

カテコ中ずっとそう思ってしまって、なんかもうカテコあんまり覚えてない。お父様とおじ様がいらしてたのと、面白いかな?て不安なときに橋本さんに大丈夫だよって言ってもらってたことくらい…

 

それにしても、こんな寂しい話ばっかでよく一人でやろうと思ったな??もちろん一人でやるのと二人でやるのじゃお話も変わるのだろうけど、こんなに寂しい話ばかり書く人が一人だったらなんか余計に寂しくなっちゃうので…人生の共犯者見つけてよかったなって…よかったと思えて安心したな…

推し度々孤独の話するし人間は一人って言うし、それはそれで大好きなんだけど、そういうときの孤独って「Solitude」という感じなのに、物語に描かれる孤独は「Loneliness」が多い気がするな。

推しの描く孤独や寂しさに毎回あてられてしまって心臓が痛い。

見てる間も見終わってからも、今もちょっとまだ言葉が見つからないのだけど、ずっとヒリヒリしてたし、寂しかったな。

推しが描く空虚や孤独や寂寞が好きだし刺さる。ずっと心臓をひっかかれている気分だったし、たまにでかい傷をつけられていた。

人と出会うことは心に鋳型を作ること、と書いていた『対岸の彼女』の解説が好きなのだけれど、創作物に触れることは、心に無数の傷をつけられることだよなあ、と思っている。

 

 

以下各話感想。

 

入場したら舞台に文字をバラしたようなブロックが散らばってて言式になるやつだ♪とワクワクした。オープニングで積み上げられてたけど、初っぱなから梅津さん担当の式が全然できてなくて、橋本さん担当の言は惜しいとこまで行ってて、いや作らんのかい!という気持ちと、そうやって外すところが捻くれてて推しっぽいな、の気持ちになる。どちらで来ても全然納得感あるから面白いな。

積み上げて後ろから倒して壁をぶち壊す!みたいな感じだったけど、ブロックが勢いありすぎて舞台から客席に転がり落ちててびっくりした。オープニングだし拍手のタイミングだっただろうに、びっくりして固まっちゃった。

 

1話 男女

インタビューで読んだ、夜道を歩く女性の話だ~と思ってたらずっと「あ」しか言ってなくて、でもちゃんと物語わかって面白い。日本人のへそとか、アメリカでやってるという無言劇だとか、言葉が通じなくても舞台がわかる、みたいな話とかを思い出していた。

出会ってデートして結婚して子供が生まれて歳を取って看取って…人生だった。そこからスタートするの、二人のスタートと重ねてて散々結婚みたいなもんって言ってたけどめちゃくちゃ丁寧に結婚報告してくるじゃん…になった。

今時小学生でももっとスッと手ぇ繋ぐやろ!みたいな初々しいカップル演じてるのおもろかった。スカートの中見えるのとかはそういう笑いが好きじゃないのでコンプライアンス~~て思ったけど。久々に見たなあのノリ。2話でも思ったけど、恋愛方面になるとなんか男子中学生というか男子校ノリというか、DTぽいノリになるなあ…

あとずっと何回ちゅーすんねん!!とは思いました。したかっただけやろもう。

このノリで来るならそんなに刺さんないな~とか思ってたけど、この話の最後にしっかり刺されたのでダメでした。

病院のシーンで初めてちゃんと出た文章「残念ですが…」に対する反応が驚いてるみたいで、でも年齢重ねて来ていたからわかりきってるのになんで驚くの?て感じで気になっていたんだけど、最後に回収されてびっくりした。

(追記:最後の話で祥ちゃんがもういないことが判明して、多分これは祥ちゃんの訃報を聞いた反応なんだと思った。なにかを開くような仕種をしてたのと齟齬があるな、と書きながら気づいたけれど、見てるときは最初の話の唯一の台詞はここか!となった)

墓石に口づけしていたのは良かったし、踞って泣き出したところに「あ」めが降る演出も好き。橋本さんが傘を差してくれるのも、光が差すのも、手を伸ばすのも、全部二人でやっていく、のメタファーだろ、となって、いやもう狙ってるのがわかっててもそんなん好きに決まってるんですよね。傘を差しかける、光が差す、手を伸ばす、は全部ヘキなので…はい…

暖かくてキラキラして優しくてさあ…ひとりじゃなくなってよかったな、と思ったんだよ…

 

2話 幼なじみ

木になってる梅津さんと明らかに出戻りな橋本さんで笑ってたし、ナナちゃんはマルチだと思ってた。違った。ロクマチの失恋王を思い出してずっと心臓痛かった。

「祥ちゃんが言ったんだよ。木のセンスあるねって」がなんかいつまでもヒーローにすがっている感じがして心臓が痛かった。初めて褒めてくれた幼なじみのこと、そりゃ好きで大事だよな…自分をおいて二人だけで大人になるなんてずるい、って言うのが寂しくて、でもいつまでも子供でもいられなくて、ずっと一緒にいたかったのにいられないのが切なかった…

変わらないもの、変わるもの、変わってしまったもの、変わらざるを得なかったもの、変化とか羽化とか、無常だよなあ、と思っていたら最後にナナちゃんが見せたいもの、て出したのが「バナナ虫」でめちゃくちゃ笑ったし、変わらないもので出してくるのがそれ(ナナちゃんが虫好きなこと)なの、メッセージ性がありつつも軽快でポップ、の意味がわかった。

もうずっっっっと刺さりすぎて心臓が痛かったんだけど、オチが良すぎて最高だった。オムニバスの中で一番好き。失恋王大好きだったしね。

 

3話 お金持ちと貧乏人

広い家に一人暮らし、の時点で寂しくてウワ…となった。モノで心の空隙を埋めるのも、モノを持たないことが生きる気力のないこと執着のないことを示しているのも好きな表現なので…広い家にモノを一杯詰め込みながら、モノに執着しない金持ちに、寂しさを埋めたいだけで本物なんかない!って言うのが刺さりすぎて痛い。書きながら本を捨てない売らないと言っていた推しのことを思い出している。

金持ちも貧乏人も、満たされないと言う点ではある意味同じなのかもしれないな。

どちらが幸、不幸、とかではなく、どちらも幸であり不幸であり、無い物ねだりなのかもしれない。あの話においては貧乏人の方が、心の余裕もなさそうで、まあお金はないよりはある方が豊かではあるよな…とは思いましたが。

壊してもまた直せるよ、でいい話に終わるかと思ったら本物じゃないものは全部もらってやるよ!で色々貰おうとしててイイ話ダッタノニナーに落ち着くのもまたコミカルでしたね。

シリアスで終わるのも好きだけど、笑いどころがあるのも助かるなあ。泣き落とし王(借金王?)思い出しました。あれも好きだったなあ。

 

4話 工場長とバイトのバンドマン

たんぽぽ、たんぽぽ、が可愛い。そしてたんぽぽじゃなくて菊、のツッコミで笑う。そもそも今生花じゃないよね?

こんなところにいるべきじゃない、と夢を追うバンドマンかと思いきや、自分は器ではないと悟って挫折していたの切ない。工場長も娘ちゃんにいいとこ見せたかったのにお魚がよかったって言われてて切ない。子どもは素直だよねえ。親戚の子が言ってるのでも聞いたのか、橋本さんの姪っ子ちゃんの話なのか、やけに具体的だなあと思った。

若いんだからバイトしてお金貯めて夢を追えも諦めてやり直せも(二項対立の内容うろ覚えだけど…)多分どっちも間違ってなくてどっちも正しくもないんだよな、どっちを選んでどう考えて、自分が満足するか、納得するか、で。

残機1の怒りでも書いていたけれど、「途方もない憂愁を生涯の伴侶として選ぶ覚悟」があるかどうか、なのだろうなと。

それしかできない、とかいろんな選び方はあるだろうけどね。人生だなあ、と一番感じたかもしれない。

 

5話 演出家と役者

椅子持って客席に降りたから監督?と思った。若干パワハラ監督かと思ってビクビクしてたし、急に客席に突入して下手から上手に移動してきたときは怖…となりました、移動してた列の一つ後ろの上手ブロックにいたから十戒どころか道なき道を行くじゃん…て感じだった。お客さん慌てて荷物引き上げてて、後ろで黄色い悲鳴上がってたけどその列の人は困惑と焦りって感じだった。舞台の演出家ならゲネプロやらなんやらで座席の間移動するのかな。

そして役者がまさかの亡くなってた設定でびっくりした。言われてみれば無視してるようだったな…病院で医者の橋本さんが「残念ですが…」って言って、旦那の梅津さんが「そんな」みたいに言ってたのがなんとなく違和感だったんだけど、あれは劇中劇みたいなものだったんだな。だからずっと「あ」だけの劇の中に、台詞があったんだな。台詞だけは現実だから。

演出家の「祥ちゃんが言ってくれたんだよ。芝居のセンスあるねって」で情緒ぐちゃぐちゃにされたし、ドーンドーンに解体工事の音が被って、最後に壁が倒れて降ってきた「あ」やたんぽぽが客席まで飛んできてきたの、綺麗だった。あの一瞬だけすごく現実味がなかった。ぶわっと迫ってくる文字や黄色い紙吹雪が目に焼き付いている。

最後の最後、壁が倒れた後に、誰もいなくなった空間に向かって演出家が「祥ちゃん」って柔らかく優しく呼ぶのが、迷子みたいで寂しくて苦しかった。すがっているみたい、と思っていたけど、そう言ってくれたことにすがってここまで来たんだなあ…と思うと一人になってしまったのが寂しい。最後にはみんな一人だけど、できる限り長く二人で続けていってほしいなあ。しんみりしちゃった。

発表されたとき、一人じゃなくなったんだ、推しの寂しい話はもう見られなくなっていくのかなあ、とか思っていたので全然そんなことなくて嬉しかったしきっちり刺されて心臓痛い。まあ二人になろうとも埋まらないものもあるし、そもそも過去までもが埋まるわけでもないしな…

 

話数横は梅津さんと橋本さんの役。

 

10月25日(水)初日!上手